FUJIFILMらしさの結晶、日常に溶け込むX100F
FUJIFILM伝統のプレミアムコンパクトカメラ「X100シリーズ」。
その中でも初代〜4代目までのレンズは、開放時の写りがソフトで個性的と言われています。
この2017年発売の「X100F
」もソフトフォーカスがかかったようなオールドレンズの雰囲気が楽しめると、今でも愛されているカメラです。
そういう僕もクラシカルなカメラの中でもフラットなデザインが大好きなので、どうしてもFUJIFILM機でもレンジファインダー的なタイプが欲しかったのです。
僕の選択肢としてFUJIFILMのXシリーズでフラットなデザインといえば「X100」「X-Pro」「X-E」の3つ。
日常的な持ち歩きやすさと写りの良さ、レンズ沼にハマらないシステムを考慮して、このX100Fにしました。
交換レンズはOLYMPUS PEN-F
ですでに散財していますし、もしFUJIFILMでもレンズ交換式にしてしまったらフォクトレンダーとか絶対使いたくなるでしょう。
そんなこともあって、ちゃんと自分の生活レベルに向き合ってカメラを選ぶことにしています。

X100F
どうでしょう、クラシカルかつ洗練され過ぎていない「ちょうど良いデザイン」が親しみを感じさせます。
かっこいいデザインで重要なのは、なんといってもこのOVFとEVFがレバーひとつで切り替わる「ハイブリッドビューファインダー」の存在です。
ここに光学ファインダーがあるのとないのでは見た目の締まりが全く違います。
「見た目か!写りとか性能で語るんじゃないの?」と言われそうですが、高性能デジカメをわざわざクラシカルなデザインで作るのですから、見た目はめちゃくちゃ大事です。
それを裏付けるように(と僕が勝手に思っている)、光学ファインダーがない僕の最愛のOLYMPUS PEN-F
にはこの部分にAF補助光窓が配置されていますし、FUJIFILM X-E4にはでかでかと商品名が印字されています。
それくらい、この場所に光学ファインダーがあるというのは、クラシカルなカメラのデザインにとって、非常に重要だと僕は思っています。
もちろん光学ファインダー(OVF)も普通に使います。
OVFで厳密に構図を決めないで撮る良さというものは気分も軽やかになるもので、X100Fの楽しみ方の一つであります。
そしてEVFは近接でパララックスが大きくなるときにピントを合わせるときなどに便利で、用途と気分に合わせてOVFとEVFを自然と使い分けられる操作性が素晴らしいです。

X100F
この金属感。
すっきりしてシンプルな軍艦部。
こうしてみるとダイヤルだらけのイメージというわけでもないですね。
シャッターダイアルの中にISO感度ダイヤルがついていて、伝統のクラシカルデザインを現在に継承しています。
ただ老眼の僕にはこのISO感度ダイヤルの表示の小ささがなかなか大変ですが、かっこいいからやむを得ません。
さて、シャッター音はというと、聞きなれないサウンドが3種類。
「レンズシャッター」「フォーカルプレーンシャッター」「ミラーアップ」の3種類とのことですが、個人的にはどうにも喜びを感じにくい渋い音になっています。
X100シリーズの弟分である「X20」も同じようなシャッター音だったような気がしますが、その時は割と気に入っていたのでカメラが変わるとシャッター音の印象がずいぶん違うのが不思議です。
いっそのことシャッター音をOFFにしたほうが、撮影フットワークの軽いX100Fのイメージにぴったりで気持ちも軽やかにいけますね。

X100F
X100Vから完全にフラットになったトップカバーですが、個人的にはX100F
までの角が斜めになっているこのデザインの方がよりクラシカルかつ人間味があって好みですね。
「FUJIFILM X100F」の商品名はさりげなくていいんじゃないでしょうか。
「FUJINON LENS SYSTEM」の文字もなかなかおしゃれです。
そしてそれを繊細な線で刻印されているのもこのカメラの質感を高めています。

X100F
ダイヤルに施されたローレット加工。
高い精度が必要な加工ですが、とても綺麗に仕上がっていて美しいです。
こうした手間がかかる細かな配慮の積み重ねが、X100Fの魅力を高めています。
そしてOVFとEVFをワンタッチで切り替えられるレバー。
クラシックカメラの「低速シャッターダイヤル」と「セルフタイマーレバー」をミックスさせたようなデザインに最新の機能の利便性を高めるよう設定されていて、ただの模倣ではない「普遍的なデザインの継承」というメーカーの意志を見事に表現しています。
こうしたカメラの歴史すら感じさせるFUJIFILMのものづくりの姿勢が、写真を楽しむ人たちの日常を豊かにしてくれるのだなと嬉しくなります。


FUJINON23mm f2の開放時の独特な描写とはいかに(作例)
では、実際にどんな写りをするのでしょう。
X100F
は絞り開放でふわっとしたソフトな描写がたまらないと評判です。
その独特の開放の描写とはいかなるものか、身の回りを撮ってみました。

FUJIFILM X100F
・・・たしかに独特です。
いままでこのような描写をするレンズを使ったことがなかったので、僕の使い方は合っているのかとしばらく困惑していました。
「ど・・どこにピントが合っているんだ?」と戸惑いを隠せませんが、ふんわりとした雰囲気に不思議な魅力も感じます。

FUJIFILM X100F
絞り開放でも対象物との距離によって写りも変わってきます。
花びらの柔らかい感じとしっとりとした空気感がよく出ていて、目で見たままの姿とは違う情緒を感じさせてくれて良い感じです。

FUJIFILM X100F
商業施設に咲いていた紫陽花。
レンガ調の壁への照り返しが紫陽花を美しく見せてくれます。
フィルムシミュレーションは「PROVIA」。
目的や対象によって使い分けると本当に素晴らしい写真が撮れるフィルムシミュレーションですが、日常の自然を撮るときにはPROVIAの派手すぎない鮮やかさが気持ちいいです。

FUJIFILM X100F
春の日差しが心地よい昼下がりの散歩道。
奥行きを感じさせるこの写り。
その場の雰囲気を写真に閉じ込めたような独特の描写がたまらないですね。

FUJIFILM X100F
開放F2でも光量が少ない状況ではキリッと写ります。
なんでもない日常の風景を大切に残してくれて、キッチンの金属とコーヒーの質感が気に入っています。

FUJIFILM X100F
うどん屋さんで揚げ物をX100Fで接写する人はあまりいないと思いますが、面白そうなので撮ってみました。
揚げたて天ぷらのジューシー感はともかく、ふわーんと不思議な仕上がりになってユニークな写真となりました。
レンズが2型になってキリッとした描写になったX100VやX100VIに、ソフトな表現ができるフィルターをわざわざ着ける方もいることから、なんだかんだでX100シリーズに柔らかい描写を求めている方は多いのだなと感じます。
レンズを交換せずに端正な写りから個性的な写りまで、日常的に楽しめるX100F
は写真がある生活を豊かにしてくれる素晴らしいカメラ。
こんなカメラを何年も作り続けてきたFUJIFILMって本当に写真文化を大切にしているんだなあと感じた次第です。


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